XR(VR・AR・MR)は、どんな知的財産にすれば良いのでしょう?

XR(VR・AR・MR)は、どんな知的財産にすれば良いのでしょう?

はじめまして、こんにちは。

VR-ROOM専属弁理士のQです。

最近、

悩める女性
悩める女性

XR  (VR・AR・MR) はどんな知的財産にすれば良いのでしょう?特許?意匠?いっそ商標?

などと悩むことがふえまして、他の方もご興味があるかと思い記事を書いてみることにしました。

日本のXR系の知的財産出願はなかなかふるわず、数だけ見ると、アメリカや中国はもとより、韓国にも大きく引き離されています。

日本にも、動的意匠や動き商標、立体商標なんて言うカテゴリーもありますし、特許庁も色々がんばって新しい制度を取り入れてくれたり、質問に答えてくれたりしていますが、いざ自社が先頭を切るとなると、気合いがいるというか、二の足を踏んでしまうと言うか、どうぞお先に、と言いたくなりますよね。

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そんな悩みを抱えたまま、先日VR-ROOMの取材チームと一緒に、幕張メッセでおこなわれた「XR総合展」にお邪魔してきました。体感できる展示が多くて、とても楽しかったのですが、弁理士としては若干不完全燃焼。

パンフや展示に「特許出願」という文字を観るたびに検索したのですが、あまりXR感が迫ってこないというか。

まぁ、それはそうですよね。

ヘッドマウントディスプレイのように形が見えやすい「もの」の知的財産ならともかく、実体ではないVRやMRの中身の知的財産を取ろうと思うと・・・大変だぁ。

 

意匠や商標の場合

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例えば、意匠をかんがえてみましょう。

バーチャル環境で素敵なデザインの家具などを創作した場合です。この場合、ほんもの椅子やタンスではないので、椅子やタンスのデザインとして意匠を取るのは、多分無理、なのです。

意匠の出願は、物品ごとにしなければならない決まりになっていて、この物品の区分が割とキビシク決まっています。そこに、「VRで見えるような気がするけれど実際には存在しない映像で作ったタンス」などという物品はありません。

いやいや、図面があれば出願はできるし、物品はタンスにして意匠権とっちゃおうよ、と思いますか?

気持ちはわかります。CADなどで図面を書いている間は、本物のタンスにそのデザインを使おうが、VRに使おうがやることはそんなに変わりませんから。

しかし、その場合、本物のタンスを真似して作った人には「まねするな!」と言えたとしても、VRで真似したタンスを作った人には何も言えないという切ない結果に。

意匠権の類似(←これによって権利の及ぶ範囲が決められてしまいます)の範囲には、物品が似ていない場合には、たとえデザインが似ていたとしても「法律的には全然似ていないね!真似したとは言えないよ!」という判断になるのが普通、という逆風が吹いています。

これでは、VRが主戦場の人の権利としては、出費の甲斐がありません。

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では、商標はどうでしょう。

例えば、バーチャルな環境でアバターが着る自社マークがついた洋服が売れまくり、数万人が〇〇社の服じゃなきゃ!と思ってくれたとたら?

一般常識で考えれば、自社以外がこのマークをつけたアバターの服を勝手に売りさばいたりしたら「ゆるせーん!うちのブランド力を何と心得る!」とおもうかと。

でも法律的に考えると、意匠の時と同じように、そのマークの信用、どうやって守るの?ということに。

商標法では、「商標とは文字、図形もしくは記号もしくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合で、営業者が商品または役務(サービス)について使用するものを指す(商標法2条)」となっています。

要するに、商品やサービスと対応していないと商標権になれないわけです。

商品、何?・・服じゃないですよね、本物の服ではないから。

サービス、何?・・小売業、ではない気がしませんか?

なんとなく、意匠と同じ感じで、心が折れそうになってきます。

特許の場合

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よし判った、特許だ、特許!

と思ったところで、特許には「自然法則を利用した技術」という縛りがあって、純粋なアルゴリズムとか数学モデルは特許権になれないルールです。

勿論プログラムOKではあるのですが、無制限とも言えなくて。

審査の土俵に登る前提段階で、使用目的に応じた特有の処理方法が構築されていて、ソフトウェアとハードウェアが協働して動かないと門前払い、とかなりかねません。

寺子屋時代をひきずる著作権(←VRやMRでうつしとったモノの著作権とか考え始めたら涙が出ます!)よりマシとはいえ、特許制度だって、百年以上前の、価値の比率が有体物より無体物の方が大きくなるなんて夢にも思わない時代にがんばってつくった基礎がもとになっている訳ですから、文句を言うのも酷というもの。

こんなわけで、発明者も弁理士も、XR産業の経営者も、試行錯誤を重ねながら、斜めを向いたり、アクロバットな思考をしたり、新しい制度をつかったり。

なんとか自分たちに有利な権利をつくっていかないといけない状況に居るわけですが、これがなかなかに難関。

それでも「XR総合展」でお話しさせていただいた方々には果敢なアイディアをお持ちの方が目白押し、でした!

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そして、最近の出願を調べてみても、頑張って意匠で特徴をとろうとしたり、特許でインターフェースから頑張ろうとしたりと、色々な例が出て来ます。

VR-ROOMも、残念ながらこれで盤石、という解決策を持っているわけではもちろんないのですが、少しずつでも情報発信をして、VR、MR、AR好きの方々と一緒にXR知財の取り方を考えていければと思っています。

ご興味のあるかたは、時々覗いてみてください。

 

おまけの情報

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今回の「XR総合展」の出展された方々は、どんな出願の仕方が多いのかな、という興味で、

Fタームが「5E555BE17」という分類(簡単にまとめるとVRやARで利用するユーザインターフェイスの技術を扱う発明のグループです)を見てみました。

 

Fタームが「5E555BE17」に分類される特許の出願数

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特許出願は、公開されるまでに普通1年半の猶予期間がありますから、2020年と2021年の出願数はこれからまだ増えていきますが、多分、2018年が出願のピークでしょうか。

今回のXR展に出展されていた企業様で、上位にお名前が載っているところがいくつもありますね。

 

Fタームが「5E555BE17」に分類される特許出願をたくさん出している会社

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近年、Google社やフェイスブックなどのGAFAと言われる大企業は、VRのハードウェア系のベンチャー企業をずいぶん派手に買収していましたから、今後はソフトウェア系でも面白い出願がふえていくかもしれません。ベンチャーよりも、お金に余裕のある大企業の方が、日本に出願してくれることが多いので期待してしまいます(まぁ、権利をとられてしまえば、日本の企業がライセンス料を取られてしまう訳で、ほどほどが一番ですけれども)。

と、いう訳で、不定期にはなりますが、世の中がどうVRやARを知財化しようとしているかもご紹介していければと思っています。

こんなことが相談したいな、とか、いやうちはこんな良い権利をとったから紹介して!とか、はたまた、いっそウチが先陣きったるで!等々ありましたら、ご要望にお応えできるよう頑張りますので、VR-ROOMのinfoにメールを送ってみてくださいませ。

ちなみに、本サイトの運営母体は、普通のVR好き製造業(コンクリートの会社です)の研究会なので、作業服が怖い!とかでもなければ無害な集まりです。ご安心ください。

今後ともよろしくお願いします!

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