鯛よし百番が遊郭建築の保存・修復を目的としたクラウドファンディングを開始

鯛よし百番が遊郭建築の保存・修復を目的としたクラウドファンディングを開始

MICRO HERITAGEの協力を得て、鯛よし百番のVR映像公開中です。

株式会社鯛よし
 

 

「鯛よし百番」は大阪・飛田新地の外れに佇む、大正時代に建てられた遊郭、妓楼建築です。当時の遊廓建築を今日に伝える貴重な近代和風建築として高く評価されており、国の登録有形文化財に指定されています。築100年以上経った今、建物の基礎、外装、内側は大きく劣化してきており、一刻も早い修復が望まれています。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響により、鯛よし百番では料亭としての売上が大幅に減少。修復にかかる費用のすべて負担することは難しい状況です。
そこで今回、保存修復プロジェクトを立ち上げました。資金調達をにむけて、READYFOR株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役CEO:米良はるか)が運営する日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」にて、ご支援を募ることにいたしました。(プロジェクトページURL:https://readyfor.jp/projects/micro-heritage-hyakuban

 


【建物を保存修復する意義】
街中には歴史的な価値のある小さな文化遺産がたくさん眠っています。しかし建物の改修保存には大きな費用が必要となることや、個人の手では管理が行き届かず、所有者が亡くなり、遺産相続などの過程で取り壊しされるケースが急増していっています。
「鯛よし百番」も例に漏れず、建物修復の必要性は感じていたところでしたが、その費用捻出がネックとなり、なかなか計画が進みませんでした。さらにコロナ禍の影響で、経営的にダメージを受け、更に修復にかかる費用捻出が厳しい状況となっています。このままの状態が続いてしまうと、建物の老朽化は更に進み、修復さえ難しい状況になりかねません。今このタイミングでなんとかこの大切な文化遺産を守り、残していくことはできないか、そう考えた結果、修復にかかる費用を募るクラウドファンディングの実施を決意しました。
 

 

【修復ポリシー】

鯛よし百番は、大正期の遊郭妓楼建築、近代和風建築としての特性と、戦後の大改修による綺羅びやかな桃山美術館としての特性をあわせもっています。今回の修復にあたっては、当初の建築構造を意識してオリジナルに復原することを意識する一方、豪華絢爛な内装の特徴的な部分は修復して可能な限り残すという方針を掲げています。
大きな建物のため集まったご支援金額に応じて、可能な限り修復を進めていきますが、予定している金額の範囲では、早急に手を入れる必要のある建物の基礎部分、雨漏り等の構造修復ほか、目立つ部分の顔見世の間や外側の欄干などの修復などを優先して行います。玄関ドアや、上部の唐破風の修復、外観をよく見せるため、室外機や塩ビの雨樋などを和風建築にあわせて修理していきます。今後、ご支援いただく金額に応じて修復箇所を広げていきます。










【クラウドファンディングプロジェクト概要】
・プロジェクトタイトル:鯛よし百番」修復へ。飛田百番の魅力、歴史を未来につなぐために。
・募集期間︰2020年6月30日(水)~8月10日(火)  41日間
・目標金額:1500万円
・プロジェクト形式:All or Nothing・購入型
※All or Nothing形式は、期間内に集まった支援総額が目標金額に到達した場合にのみ、実行者が支援金を受け取れる仕組みです。
・URL:https://readyfor.jp/projects/micro-heritage-hyakuban
・資金使途 :建物の修復
・リターン例(一部):限定グッズ、食事券、記念焼酎、建物ツアー、講演会など

【クラウドファンディングとは】
インターネット上で支援金を募る仕組み。支援者は支援額に応じたリターンを受け取ることができる。

 

【飛田新地、飛田遊廓について】
近年、全国で遊郭建築の保存、活用が行われています。鯛よし百番のある飛田新地は、売春防止法が完全施行される1958年までは飛田遊廓と呼ばれる遊廓でした。1912年に難波新地にあった遊郭が全焼する大火があり、1918(大正5)年に今の場所に移転、第2次大戦前の最盛期には200軒を越える妓楼が存在したといわれています。
飛田遊廓が開業した大正時代は、江戸時代の洗練された文化と明治維新以降、流れ込んできた西洋文化が生活のさまざまな分野で融合し始めた時期であり、その文化的な影響はエリア内の建物の多くに見て取れます。
そして、飛田新地を語るうえで、その建築的な側面だけでなく、性風俗の問題にも触れることは避けて通れません。100年前にタイムスリップしたような感覚、遊郭の絢爛とした、同時に妖艶な雰囲気を強く感じるのも、そこが性風俗が行われる場所だったのは間違いないでしょう。セックスワークを存在すべきでないものとして否定するのは簡単ですが、これは社会問題であり、知ることがひとつの解決につながっていくという側面もあります。その意味でも、飛田新地で、純粋な料亭としての訪れることができる、「鯛よし百番」は重要な学習機会を提供する場であるとも考えています。

【VR映像の公開】
クラウドファンディングに先立ち、MICRO HERITAGEの協力を得て、鯛よし百番内部をVR映像で公開するなど、まずは関心をもってもらうところからスタートしています。

https://micro-heritage.jp/
https://my.matterport.com/show/?m=J2UScxqzhuu


【リターン特典:撮影プランについて】
 鯛よし百番は通常、食事の予約をしないと建物内に入ることができません。撮影は認められていますが、暗くなってからしか入れないこと、たくさんある部屋の中から予約した部屋しか撮影できないなど、そこまで自由に撮影できるとはいえません。
今回のクラウドファンディングでは、昼間の鯛よし百番に入れる機会として、「建物ツアー」「撮影プラン」をご用意しています。このうち「撮影プラン」では1つのリターンチケットで1組3名(同時利用:5組程度)で入場できるプランを限定50組でご用意しています。機材等の用意はございませんが、普段なかなか利用できない遊郭建築を、自然光のもと撮影スタジオのように利用できるプランとなります。
 



【MICRO HERITAGE事業について】
街中の個人所有の文化財、文化財未満の建築物を様々な形で保存していくプロジェクト。
第一弾として、飛田百番のVRデータを公開するとともに、クラウドファンディングを活用した保存修復のサポートを行っています。有形登録文化財のうち民間が所有する建築物の多くが近年取り壊しの危機に瀕しています。 我々は、それらを小さな文化遺産(=MICRO HERITAGE)と名付け、最新VR技術により保存、学識経験者の協力を得た調査研究、社会へのPR活動、さらには改修資金の調達までをサポートしていきます。(事業主体:株会社サミット不動産、有限会社CR-ASSIST)

 



【応援メッセージ】
○株式会社 鯛よし代表取締役 木下邦子 
はじめまして、鯛よし百番を所有する株式会社 鯛よしの木下邦子です。
私どもは、今から50年前より、父である故・木下勝義とともに、この歴史ある鯛よし百番の建物をお食事処として守り育て、大阪のみならず全国の皆様にご利用頂いて参りました。
しかしながら、築100年を超え、建物の劣化が進んでおります。加えて、昨年よりの新型コロナ感染症の影響を受けまして、その修復費用の捻出も困難な状況となっております。そこで、このたび、Micro Heritage様の協力を得て、建物修復のためのクラウドファンディングを実施させていただくことといたしました。
初めての経験ではございますが、これまで、ご愛顧いただきました皆様からのご支援をお願いする次第です。
いただいたご支援をもとに、鯛よし百番の建物を修復し、よりよい環境で皆様をお迎えできるよう、今後も努めて参りたいと思っております。
これからも鯛よし百番を、よろしくお願い申し上げます。

○橋爪 紳也 大阪府立大学研究推進機構特別教授/大阪府立大学観光産業戦略研究所長
わが国において、近代和風建築の再評価が始まったのは、1980年代のことです。鯛よし百番は、当時から和風の妓楼建築として高い評価を受け、近年、登録有形文化財にも指定されました。戦後になってから内装は大幅に改築されていますが、建物そのものは大正から昭和初期における大阪の都市文化を、さらには近代遊郭の文化的景観を今日に伝える貴重な存在です。
私が、この鯛よし百番についての調査研究を始めてから、40年近くの年月が経ちました。文献資料や関係者のヒアリングを重ね、『飛田百番 遊郭の残照』(創元社2004年)、『写真が語る「百番」と飛田新地』(洋泉社2019年)などの書籍を編み、竣工年次の確定や改築の経緯について検証を重ねてきました。オーナーである木下さんとも親しくさせていただいています。
はじめて百番を訪れた当時と比べると、基礎の沈下によって柱や梁が歪み、長年の風雨で外装も傷みました。襖絵や壁画も傷みが目立つようになりました。損傷の激しい建屋を目にするたびに、改修の必要性に思い至ります。
これまで緊急的な修理は行われましたが、本格的な修復に向けた動きはなされていません。今回のクラウドファンディングの試みを端緒として、将来的には大規模な改修につなげていければと考えています。
また価値のある建造物を次世代に残すためには、記録保存が不可欠になります。工事関係の資料のほか、経年変化の状況を後世に伝える画像、どのように使われているのかといった記録が重要になります。先に紹介した著書も、飛田百番に関する写真や文書を残すために企画したものです。今回作成された鯛よし百番のVRは、まさにデジタル化の時代に対応した文化財の記録保存の試みです。今後、ほかの文化的建造物にも応用できる取り組みでしょう。
最後に、株式会社鯛よし、そして、Micro Heritageの益々のご活躍をお祈り申し上げるとともに、皆様には本件に関する、ひろく熱いご支援を心より、お願いいたします。