静岡新聞社が「袴田事件」の過酷な取り調べをVRアプリ化 9月26日の再審判決を前に

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MetaQuest用アプリ「最後の砦」VR(通称・VR袴田事件)を取材班が内製
2024年8月26日、静岡新聞社(本社:静岡市駿河区登呂3-1-1、代表取締役:大須賀紳晃)は1966年6月に現在の静岡市清水区で起きたみそ製造会社の専務一家4人殺人事件(袴田事件)を通して再審制度の問題点を追ったキャンペーン連載「最後の砦 刑事司法と再審」を基にしたMetaQuest用のVRアプリ「最後の砦」VR(通称・VR袴田事件)を開発、リリースしました。袴田巌さんの再審公判の判決が1カ月後の9月26日に迫る中、袴田さんが受けた過酷な取り調べを追体験し、キャンペーン連載の一部の記事をバーチャル空間上で読むことができます。Metaの公式ストア(AppLab)で無料でダウンロードできます。 →「最後の砦」VRストアページ
 
 
「最後の砦」VRメイン画像
 
 
 
再審法と袴田事件をテーマにした静岡新聞のキャンペーン連載「最後の砦 刑事司法と再審」
 
VRアプリ概要
 
「最後の砦」VR(VR袴田事件)は、取材班が入手した1966年当時の実際の取り調べの音声データなどの資料を基に取材班自ら製作しました。単に音声データを聴くだけでは得られない当事者感覚や没入感を通し、袴田さんが受けた取り調べの過酷さや不毛さをユーザーが追体験できます。自白強要を主眼とした当時の取り調べの問題点や死刑冤罪、日本の再審問題、そして9月26日に静岡地裁で予定されている再審判決公判に一人でも多く関心を持ってもらえることを願っています。
 
主な特徴
 
資料を基に当時の取調室を再現
 
実際に袴田さんが取り調べを受けた警察署の取調室を当時の写真や図面を基に3Dモデルにし、さらに実際の音声データを使って当時の取り調べの一部を再現しました。※VR上の演出が含まれています。
 
 
当時の清水警察署第二取調室の写真fSpyで奥行きを解析参考にした当時の警察署の図面
 
Blenderで3Dモデル化
 
日本語と英語に対応
 
9月26日の再審判決は海外からも注目されています。袴田事件や再審問題に詳しいハワイ大のデイビッド・T・ジョンソン教授のネイティブチェックを受け、英語での利用にも対応しました。
 
<日本語>
【第1部】袴田事件概略(「最後の砦 刑事司法と再審」第4章・我れ敗くることなし  1.「私はやっていない」より)2023年10月22日付朝刊掲載
【第2部】取り調べ(録音テープから)
【第3部】再審開始までの軌跡
【特別寄稿】デイビッド・T・ジョンソン・ハワイ大教授「検察は『間違い』への姿勢を間違えた」2024年4月25日付朝刊掲載
【クレジット】
 
<English>
Part 1: Overview (From “The Last Bastion: Criminal Justice and Retrials” Chapter 4: “I Stand Undefeated”) Note: Ages are as of the publication date on October 22, 2023
Part 2: Interrogation (From Recorded Tapes)
Part 3: The Path to the Retrial
Special Contribution: David. T. Johnson at University of Hawaii, “Prosecutors Are Wrong about Being Wrong”  Published in Shizuoka Shimbun on April 25, 2024. 
Credits
 
スクリーンショット
 
【第1部】袴田事件概略(「最後の砦 刑事司法と再審」第4章・我れ敗くることなし  1.「私はやっていない」より)
 
【第2部】取り調べ(録音テープから)
 
【第2部】取り調べ(録音テープから)。ユーザーが袴田さんのセリフを選ぶことで没入感を高める
 
【第3部】再審開始までの軌跡(過去紙面)
 

今後の展開
 
冤罪や再審の問題は、冤罪被害者の人権上だけでなく、真犯人を取り逃し事件の真相が闇に葬り去られるという捜査上の観点からも極めて深刻な問題にも関わらず、一般的な関心は決して高いとは言えません。自分の身に降りかからなければその深刻さについて考えることがほとんどないのが実情かもしれません。VRアプリを通じた革新的な手法や新しい読者層へのアプローチをはじめ、今後も袴田事件や再審法の改正に一人でも多くの方が関心を持ってもらえるような多角的な報道に取り組んでいきます。
 
 
<参考>
 
袴田事件と再審経緯
 
現在の静岡市清水区で1966年6月30日未明、みそ製造会社の専務=当時(41)=方から出火し、焼け跡から専務一家4人の遺体が見つかった。県警は同8月、強盗殺人容疑などで住み込み従業員の袴田巌さんを逮捕した。袴田さんは勾留期限間際に「自白」したが、公判で一貫して無実を訴えた。80年に死刑判決が確定。袴田さんの姉ひで子さんが2008年4月に第2次再審請求を申し立て、静岡地裁は14年3月、再審開始を認めると同時に死刑と拘置の執行停止を決定し、袴田さんは約48年ぶりに釈放された。一方、検察は即時抗告。 東京高裁は18年6月、一転して再審請求を棄却したが、釈放は維持した。最高裁は20年12月、高裁決定を取り消し、審理を高裁に差し戻した。高裁は23年3月、検察の即時抗告を棄却し、捜査機関によって証拠が捏造された可能性が極めて高いとの判断を示した。検察は特別抗告を断念し、再審開始が確定した。再審公判は同年10月27日に静岡地裁で始まり、検察側は有罪立証を維持した。再審公判は論告求刑を含めて計15回を数え、24年9月26日の第16回公判で判決が言い渡される。
 
 
キャンペーン連載「最後の砦 刑事司法と再審」
 
2022年12月31日付朝刊~24年6月27日付朝刊で展開した長期連載。袴田事件などを通し、戦後一度も改正されていない再審法(刑訴法の再審規定)の不備や背景を明らかにし、立法府の役割を軸に改正実現の道筋を探った。23年3月、東京高裁は袴田巌さんの再審開始を認め、検察は特別抗告を断念。その背景の一つに地元紙の報道姿勢があったと法曹関係者から高い評価を得た。日本弁護士連合会(日弁連)は23年、32年ぶりに改正案を示した。24年3月には再審法の早期改正を目指す超党派の国会議員連盟が誕生し、自民党の麻生太郎副総裁が最高顧問に就任。加入者は現在までに330人を超す。国会議員と世論との乖離を可視化した本紙報道が「流れをつくった」(日弁連関係者)と評価されている。
静岡新聞社特設サイト 「袴田巌再審への道 我れ敗くることなし」
 
静岡新聞社について
 
1941年設立。本社(静岡)と浜松、沼津の2総局、22支局の取材網で約100人の記者が静岡県内のニュースを取材。熱海土石流を検証した「残土の闇 警告・伊豆山」で2022年度新聞協会賞受賞。
 
本件に対する問い合わせ
 
静岡新聞社「最後の砦」取材班(社会部) shakaibu@shizuokaonline.com