VR機器を抗ウィルス加工にするには?
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、コントローラー、360°カメラ、スマホ、マイク、イヤホンなどの機器を自分で抗ウィルス加工したいと思ったことはありませんか?
新型コロナ対策で、実際に人が集まることが忌避されるようになってしまった昨今、「体験」を得る手段として、VRやxRの出番は多くなる一方ですが、VR機器やxR機器はなかなかの高級品です。
家族で楽しむレベルであっても、例えばPSVRの価格は49,980円(税抜)程度で、PS4本体を上回る価格設定。業者が使用する360°カメラに至っては、数十万円だったりもう一桁上だったり。
1人にひとつずつ、使いまわさない、使い捨て、などという手は使えません。さらに、より高度な没入感を得るためには、高級な器具のレンタル(https://vr-room.jp/rental/)も視野に入れなければなりませんし、
住宅展示場や博物館への設置や営業ツールとしての活用も、複数人での共有という問題が出てきます。
抗菌加工、抗ウィルス加工のやり方はたくさんあると思うのですが、VR機器やxR機器の場合、なんといっても高額な精密機器で、素材も単一ではなく、さらに人体に直接触れる機器でもあるわけです。
加速度センサー、ジャイロセンサー、レーザーポジションなどの精密なセンサーを搭載していたり、額にあたる柔らかい樹脂があったり、透明なレンズの部分があったり。
抗菌加工、抗ウィルス加工によって、性能も、見かけも、肌触りも、透明度も変わってもらっては困る。かぶれる等論外です。
自衛したい!しかし、機器の価値を落とすことはできない!
そこで、今回VR-ROOMでは、いくつかの抗菌加工・抗ウィルス加工を比較検討し、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、コントローラー、360°カメラ、スマホ等のVR機器やxR機器にあった方法を探して参りました。
VR機器、xR機器の抗ウィルス加工、自分でできるもん!
結果的に選定したのは、AQシールドウィルスバスター。
(https://kariyaseltec.wixsite.com/website)
ただ、こちら、見つけた時には思いっきり業務用でした。
スーパーの紀伊国屋や飲食店などによく施工されていて、ガラスコーティングで、ジェミニ型第4級アンモニウム塩を極めて薄くくっつけるという技術。
洗面所とか、カウンターとか、ドアのとか、エスカレーターの手すりとか、そういう場所への施工であればのぼりやステッカーを見かけた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、VR機器、xR機器は一筋縄ではいかない部分があります。
・後日アルコール等で拭くなどの別の処理を重ねても抗ウィルス効果が消滅しないか。
・液晶画面やレンズのように跡がついてほしくない部分や、やわらかいクッション部分や硬い樹脂、ゴムや金属などの素材が混ざり合っていても、一気に抗ウィルス化できるのか。
・VR機器やxR機器の品質にデメリットを与えることはないか。
・抗ウィルス施工の方法は簡単か、小分けで入手できるのか。
・コスパは良いのか、効果の持続時間は長いのか、認証は受けているのか。
本当は、これらの条件をクリアするものを数種類紹介したいと思って検討を開始したのですが、上から二つ目までで、候補がひとつになってしまいました。
このAQシールドウィルスバスター、調べたところ、価格と入手できる最小単位はこちらでした。
https://shop.con-pro.net/products/detail/2186
抗ウィルス剤を購入して、実演してみました!
早速購入。
最小単位だとヤクルトレベルの大きさで購入できました。
小瓶ですが、実際に使用してみると、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)10個は塗れそうな勢い。1㎡程度の広さを抗ウィルス加工できるといわれたのですが、コンクリートの壁などをイメージして計算している模様で、ほとんど吸い込まれない樹脂に塗布する分には、とてもよく伸びるため、倍以上の範囲が塗れる印象でした。
粘度は感じず、無色透明。塗っているときに若干溶剤っぽいにおいがしますが、5分くらい立つと消えます。乾いた後は、薄くて伸びる(!)ガラスの塗膜になるそうです。
塗り方は数滴たらして、コーティング世のスポンジで伸ばすか、ファイバークロスで拭き上げれば良いそうです。
クッション部分や塗りやすくて広範囲の樹脂部分は、クロスよりもコーティング用のスポンジ(スポンジ部分への過度の液剤の吸収を防止するために二層になっているもの)を使用するときれいに無駄なく塗ることができました。
レンズ部分などは、無水エタノール(抗ウィルス用ではなくて、清掃用!)で良く拭いてから液を垂らした方が良いです。AQシールドウィルスバスターは、清掃剤ではなくてコーティング剤なので、汚れたまま塗ってしまうと汚れたまま仕上がってしまうため要注意。
また、レンズの縁に液がたまってしまうと拭きにくいので、真ん中に少なめに垂らしてクロスで拭き上げるときれいに仕上がります。
見た目上は数分もすれば乾いて見えますが、念のため2時間ほどは放置しました。
残ったAQシールドウィルスバスターは、ドアノブ、タブレットやスマホの液晶画面に使いましたが、まだ半分くらい残っています。
効果は年単位で(理論的には塗装が剥げるまで)持続するとのことですので、コスパ的には悪くないと思いました。
成分と効果について
AQシールドウィルスバスターは、ジェミニ型第4級アンモニウム塩が主成分でした。
この成分の有効性はいかに。
経済産業省の要請を受けたNITEが、新型コロナウイルスの消毒方法を調査して発表しています(https://www.nite.go.jp/information/osirase20200415.html)
https://www.nite.go.jp/data/000108025.pdf
効果あり、と紹介されていたのは、とりあえず
・「アルコール」
・「界面活性剤(台所用洗剤等)」
・「次亜塩素酸水(電気分解法で生成したもの)」
・「第4級アンモニウム塩」
の4つ。
アルコール(無水エタノール)は、水厳禁のパソコンなどの精密機器や電化製品に掃除の定番のため、真っ先に候補に挙がります。
しかし、新型コロナ対策で調べると、アルコールの濃度が70~80%になるように水で割って使用しされていました。
理由は、無水エタノールは揮発性が高すぎて、濃度が高いまま使用すると、菌やウィルスを殺す前に蒸発してしまい、効果が得られにくいとのこと。これは確かに、勝手に無水エタノールで代替するのは不安です。
一方、精密機器であるVR機器やxR機器全体に、20~30%の水を含むアルコールをがんがんスプレーする、と考えてしまうと、できれば避けたいです。もちろんアルコールの濃度70~80%でも、肌にあたるクッション部分だけを拭く等の使い方であれば問題ないと思うのですが。
次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムのように激しく樹脂や金属を腐食させたりはしないということですが、経産省や厚生労働省等の検討結果に従うとすると「十分な量の次亜塩素酸水で表面をひたひたに濡らす」ことが必要とされており、(https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200626013/20200626013-4.pdf)むつかしいことがわかります。
これに対して、第4級アンモニウム塩は、処理した表面に残留し、除菌効果の持続が期待できる上、材質への影響が少ない、とのことなので、今回の目的上、主成分が、第4級アンモニウム塩に落ちつきやすかったと思います。
第4級アンモニウム塩は、常にプラスに帯電した状態の物質(カチオン型の界面活性剤)です。上の図のマッチ棒の頭の頭のような部分(親水基)が、脂質二重膜や膜タンパクに刺さると、膜の流動性が上がったり、膜タンパクの電荷がおかしくなったりで、溶けたり破裂したり宿主にくっつけなくなったりということが色々と起こるイメージでしょうか。
原理については、新型コロナ対策ではなく、殺菌処理の記事でしたが、花王株式会社の説明がわかりやすかったので、引用させていただきました。
(花王株式会社HP内 化学品研究所 C&S商品開発センター 岡野 哲也氏「殺菌と界面活性剤の話」より引用)
AQシールドウィルスバスターもこの原理で菌やウィルスを壊しているようです。
また、「SIAA ISO 21702 抗ウィルス加工」となっているので、SIAA(抗菌製品技術協議会)の認定ですね。抗菌だけでなくて抗ウィルスも大丈夫かという点については、
エンベロープ型のウィルスの部分を見ると、菌と同じように10分で99.9%減、となっていますので、データを見る限り満足です。
膜等を壊すために、第4級アンモニウム塩自体が分解されるわけではないので、何度も使えること自体はそれほど不思議ではない気がしました。
それより、ガラスが追随性をもって伸びたり変形したり出きることにびっくり。
ガラスであれば、アルコールで重ねて拭いても変質しないので安心です(アルコール消毒せずとも効いている!とわかっていたとしても、念には念を入れてアルコールでも拭く、というような場面は出てきそうな気がします)。
高熱をかけると壊れる等の制約はあるかもしれませんし、どんなウィルスにも効くのかというとそうでも無いようですが、とりあえずは新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)対策が大事と、考えるならばこれ以上のぜいたくは言えない気がしてきました。
withコロナ時代のVR& xRはインフラ?
「体験」、大事ですよね。
100均のグラスで飲むよりバカラグラスで飲む方が、気分があがるとか、
一泊3500円の宿に泊まる前より3万円の宿に泊まる前のほうがワクワクするとか、
そういう気分を変えてくれるのも「体験」の醍醐味。
日々自粛を強いられ、先の見えない状況の昨今、我々はもう十分に「体験」に飢えていますし、顧客に価値を提供する企業は、体験に対する渇望が人の心にモティベーションを起こすことをよく知っています。
この需要と供給がぶつかり合って、高揚感や雰囲気が重視される業種では、人を移動させないでも、VRやxRを使った「体験」を提供して、経済を回したり、人の心に価値を爆誕させるべくものすごい頑張りを見せてくれています。
VRやxRのコンテンツもサービスもどんどん増えていきますが、スマホのように、VR機器やxR機器が個々人にいきわたるには、まだもう少しかかりそうです。
その間の自衛やリスク低減に役立てばと思いました。
皆様が、お体に気を付けて、体験をあきらめずに、明るい日常を作ってくださいますように!
そして、「もっと良さそうな方法を試してみたよ」など、より良い情報をお持ちの企業さまはぜひ直接VR-ROOM(https://vr-room.jp/contact-us/)までご教示くださいませ!
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